生地の厚みを再現、ホットケーキの世界が広がる

生地の厚みを再現、ホットケーキの世界が広がる

株式会社OWANは、東京・戸越銀座で親しまれてきたカフェ「ペドラブランカ」の運営を起点に、米粉を使ったホットケーキの製造・販売に取り組んできました。近年、「自宅でもふわふわのホットケーキを楽しみたい」という声が増えたことを受け、家庭用の米粉ホットケーキミックス開発に挑みました。店舗の味をどう再現し、どこまで広げていくのか。同社代表の白石崇雄さん(写真右)と事業責任者の北川慶一さん(写真左)に、その挑戦の軌跡と目指す未来を聞きました。

人気店のレシピを、家庭用ミックスへ

ペドラブランカの看板商品は、厚みのあるふんわりとしたホットケーキです。もともとは小麦粉を使用していましたが、コロナ禍を機に、お客様のリクエストを受けて米粉での商品開発へと舵を切りました。

人気店のレシピを、家庭用ミックスへ
人気店のレシピを、家庭用ミックスへ

「当初は生地が固くなって膨らまず、レシピ開発を諦めかけていましたが、その後、粒子の細かい米粉が出回るようになり、ベーキングパウダーを使わずに厚みを出せるようになりました」と白石代表は振り返ります。

レシピ完成後は戸越銀座にライスパンケーキ工房を構え、米粉ホットケーキのテイクアウト販売や冷凍商品の催事・卸を通じてファンを広げてきました。

需要が高まる一方で、手作業による製造には限界がありました。安定供給と事業拡大を見据え、米粉商品開発等支援対策事業を活用し、家庭用ミックス粉の開発へと踏み出したのです。

グルテンフリーでも妥協しない、味で示す自社らしさ

家庭用の米粉ホットケーキミックス開発で同社が直面したのは、小麦粉を使わないという前提の中で、どう自社らしさを打ち出すかという課題でした。

白石代表は、「小麦粉を使わないことは出発点。その先にある“おいしさ”をどうつくるかが勝負でした」と振り返ります。

目指したのは、店舗で提供している“発酵バターを贅沢に使った厚焼きホットケーキ”の味わいを、家庭で再現できるミックス粉にすることです。発酵バターパウダーやミルクバターパウダーを組み合わせ、米粉生地でもしっかりとしたコクと香りを引き出す設計に挑みました。

しかし、配合を攻めるほど課題も増えます。材料が増えれば水分量の管理は難しくなり、品質の安定性も揺らぎます。保存性と風味をどう両立させるか。細かな調整を重ねる試作は3か月以上に及びました。さらに、ベーキングパウダーに頼らず厚みを出すため、重曹を含めた配合を繰り返し検証。どこまで“店の味”に近づけるかを追求しました。

グルテンフリーでも妥協しない、味で示す自社らしさ

こうして完成したミックスは、小麦粉不使用でありながら、ふんわりとした厚みと発酵バターの風味を備えた、家庭で再現できる商品へと仕上がりました。

同時に進めていたのが、大手キャラクター会社向け冷凍ホットケーキの受託開発です。補助金を活用し、大型ミキサーや充填機を導入して量産体制を整えましたが、当初は機械化によって「生地が立ち上がらない」という課題に直面しました。手作業では再現できていた食感が、機械では再現できません。工程と配合を見直しながら調整を重ね、従来の味と食感を保ったまま量産できる体制を確立しました。

整備された設備により、生産能力は従来の2倍以上へ拡大する見込みです。受託開発で築いた生産基盤は、家庭用ミックスの安定供給にもつながっています。

沖縄から広がる、和製ホットケーキの新展開

沖縄から広がる、和製ホットケーキの新展開

商品開発と並行して進められたのが、沖縄での展開です。2025年12月、沖縄県恩納村にヨーグルトカフェを出店しました。東京で製造したホットケーキを冷凍で送り、現地で焼き上げて提供しています。

北川さんは、「ホットケーキ」という言葉にこだわりを持っています。
「海外では“パンケーキ”と呼ばれますが、日本では“ホットケーキ”として独自に発展してきました。和製英語だからこそ、日本発の食文化として世界に広めたい。そのためには、日本の米粉を使っていることが大切だと考えています」

沖縄を選んだ理由は、グローバル展開を見据えたテストマーケティングの場としての可能性でした。恩納村周辺には欧米人居住者が多く、グルテンフリーへの感度が高い層が集まっています。観光地でありながら対応店舗が少ないこともあり、実証の場として適していると判断しました。

実際、在住外国人や観光客から強い反応があり、地元のファミリー層からも支持を得ています。地域特性に合わせた食事系メニューやヨーグルトトッピングも好評で、「沖縄に店をつくってくれてありがとう」といった声も寄せられました。

今回の事業について北川さんは、「シンプルにチャレンジができたことが一番大きい」と振り返ります。商品の幅を広げ、ロケーションを沖縄へと拡大できたこと、そしてグローバルな手応えを一定感じられたことは、次の展開への確かな足がかりとなりました。

「和製ホットケーキを、抹茶のように世界に通じる存在にしたい。そのためのテストマーケティングと生産基盤づくりという大きな一歩を、支えていただいたと感じています」

甘いおやつでも、洋菓子でもない。沖縄での挑戦は、日本の米を使った新しい食事スタイルとしてホットケーキを再定義し、その可能性を広げようとしています。

沖縄から広がる、和製ホットケーキの新展開

※本記事は2026年1月時点の情報です