職人技が光るしっとり感。老舗洋菓子店が米粉で描く新たな提案

職人技が光るしっとり感。老舗洋菓子店が米粉で描く新たな提案

広島市中区に店を構える「グランクラシック」は、地域に根差した菓子づくりが評判のパティスリーです。2026年2月には節目の10周年を迎え、オーナーシェフの片岡泰晴さんは「常に新しい価値をお客様に提供することで店の鮮度を保ちたい」という想いで洋菓子づくりを続けています。現在は生菓子と焼き菓子を合わせて常時60種類ほどの豊富なラインアップを取り揃え、地元住民や観光客に親しまれています。

最近は日を追うごとに、子どもが小麦アレルギーを持つママ層や健康志向の高い人からグルテンフリーの商品を求める声が寄せられるようになっていたそうです。こうした顧客ニーズの高まりに加え、折しも米粉商品開発等支援対策事業が開始されたことを知った片岡さんは、これを良い機会と捉え、米粉商品の開発へと初めて踏み出しました。以前に期間限定でグランクラシックブランドの米粉菓子を販売したことがあったものの、自社開発は今回が初めて。長年小麦粉を扱ってきた熟練の職人が米粉と向き合い、小麦粉にはない新たな美味しさを追求した日々について片岡さんに聞きました。

素材の特性を見極める。マフィンとダクワーズを選んだ理由

今回片岡さんが取り組んだのが「米粉マフィン」と「米粉ダクワーズ」の開発。米粉は小麦粉と違って、生地に弾力や粘りを与えるグルテンを含みません。そのため、焼いた後の膨らみやボリュームを出すことが難しく、製菓素材としては非常に繊細な扱いが求められます。

片岡さんは、数ある洋菓子の中で米粉でも比較的ボリュームを出しやすく、ふんわりとした食感を実現しやすい菓子として、これら2つの品目を選びました。しかし「米粉と初めて向き合う日々は試行錯誤の繰り返しでした。小麦粉とは性質がまったく別物である米粉は、焼成後に日が経つにつれてパサついてくる壁にぶつかりました」と片岡さんは振り返ります。

素材の特性を見極める。マフィンとダクワーズを選んだ理由

約半年間にわたる試作期間の中で、片岡さんは油や蜂蜜、水飴といった副材の種類と配合を幾度も調整。さらに、泡立てた卵白の量を増やし、生地の中に空気を抱き込ませるといった対策を経て、ようやくしっとりした、優しい口当たりの米粉菓子を完成させたのです。しかし、片岡さんの探求心は止まりません。「米粉マフィン」についてはより一層精度を高めた上で、プレーン味とバナナ味の2種類を販売しているそうです。

最新設備導入による生産性向上がもたらすもの

最新設備導入による生産性向上がもたらすもの

新商品を今後展開していくにあたって、補助金で導入するスチームコンベクションオーブンやミキサー、冷蔵庫、テーブル型冷蔵庫といった米粉用の設備機器が重要な役割を担います。特にスチームコンベクションオーブンは、湿度や温度を緻密にコントロールできるため、米粉特有の繊細な焼成条件に合わせた設定が可能になり、生産性が期待されます。順次機材の納入は進んでおり、すべての機材が稼働すれば「製造能力は従来と比較して約1.5倍に向上する見込み。すでに導入できている機材だけでも手ごたえを感じている」と片岡さんは話します。

この生産体制の強化は、単なる効率化にとどまらず、将来的な販路拡大への糸口にもなります。現在は店頭での販売が中心ですが、今後は広島駅の商業施設や百貨店といった外部からの大口注文にも対応できる体制を整えている段階だといいます。「マフィンに先行して販売を開始したダクワーズは、バターを使用していないヘルシーさも相まって美容に関心の高い層の開拓につながればよいと思っています」と片岡さんは今後のターゲット層拡大を見据えた販路拡大を目指しています。

米粉を定番の選択肢へ。広がるおいしさの可能性

グランクラシックでは、これらの米粉商品を一時的な企画として終わらせるのではなく、ブランドの定番ラインアップの一角として定着させていく考えです。製造数や販路を拡大することで、地域の農業や製粉業者との連携を深め、安定的な原材料の確保と消費拡大を図っていくことも片岡さんが目指す取り組みです。

米粉を定番の選択肢へ。広がるおいしさの可能性
米粉を定番の選択肢へ。広がるおいしさの可能性

今後の展開として、季節の移ろいを感じさせるフレーバーのバリエーションを考えているとのこと。「春には桜や広島県産のレモンの砂糖漬けを生地に混ぜ込むなど地元産の素材を活用することで、広島の味覚と地域資源を活かした商品づくりをしていきたい」と片岡さんは考えています。
さらに、酒粕を混ぜ込んだ大人向けのマフィンや米粉クッキーなど米粉菓子のラインアップ拡充、米粉菓子だけで揃えるアレルギー対応ギフトセットなどこれまでのグランクラシックで見られなかった商品を開発して「お祝い事や贈り物としても選ばれる『安心でおいしい』お菓子の幅を広げていきたい」と片岡さんは続けます。

フォロワー約1万人を抱えるSNSでの発信や店頭での試食イベントを企画して、日常の楽しみやギフトで大切な人に思いを届ける際に、米粉菓子が一つの魅力的な選択肢となるように「米粉の価値」を伝えていきたいと片岡さんは話します。職人の確かな技術によって、米粉が持つ「和」のイメージと洗練されたフランス菓子のエッセンスが融合し、現代の多様な食ニーズに応える新しいスイーツのカタチを、片岡さんはこれから提案し続けてくれることでしょう。

※本記事は2026年2月時点の情報です