千葉県の自然をはじめ、価値あるものを守り、未来へとつなげたい

千葉県の自然をはじめ、価値あるものを守り、未来へとつなげたい

千葉県旭市で創業し、80年を超える歴史を誇る株式会社セガワ(以下、セガワ)は、千葉県の名産品である落花生と米の問屋です。3代目となる加瀬宏行さんは、落花生の卸しだけでなく、落花生加工品を製造・販売するブランド「Bocchi(ぼっち)」を運営したり、無農薬有機栽培で落花生を育てたりと幅広く事業を展開しています。その理由は、収穫後の数カ月しか繁忙期がなく、また若年層に認知されなくなっている千葉県産落花生とそのビジネスを救いたいという想いがあるからです。

異業種からの転身で見えた、地元・千葉県の一大産業の危機と課題

「実家を離れて東京都内で就職したこともあり、千葉県に戻って家業を継ぐつもりはありませんでした。でも、幼い頃から慣れ親しんだ自然豊かな旭市は大好きな場所。その稀な魅力に、結婚する際に実家に報告に帰ったとき、改めて気づいたのです」

セガワのある旭市は、中心となる旭駅からわずか半径10kmの範囲に山も海も畑もあります。その自然の中で暮らし、育ってきた加瀬さんは、久しぶりの帰郷で幼い頃の楽しい記憶がよみがえったのだそうです。結婚後は地元に戻って暮らすのも良いかなと、お父様に話したそうです。その話を聞いたお父様は、ちょうど合併した食品加工会社を任せたいとオファー。

「これまで落花生はおろか、食品とはまったく関係のない世界で生きてきました。だから右も左もわからず、学ぶことばかり。でも、だからこそ千葉の落花生と関連ビジネスの課題に気づき、危機感を持てたのかもしれません」

異業種からの転身で見えた、地元・千葉県の一大産業の危機と課題

その課題の大きなものの1つが、繁忙期の短さでした。落花生を収穫して乾燥させた後の数カ月しか、工場が稼働しないのです。それだけでは従業員を雇い続けられず、会社は様々な業務を受託していました。中には千葉県産の落花生を脅かしている、海外産の安価な落花生を受け入れ、袋詰めする業務もあったそうです。
落花生は、千葉県が一大産地ですが、その生産者も収量も減少の一途をたどっています。理由は、収穫後の乾燥・加工に手間もコストもかかること、落花生を使った名産品がほとんどないこと、そして若年層の消費量が減っていること。これらも課題でした。このままでは落花生が絶えてしまう、未来につながなければ、と危機感を持った加瀬さんは、その改善に立ち上がります。

「まずは工場を通年稼働できるよう、新たな加工品をつくらねば、と考えました。様々な苦労がありましたが、なんとか完成したのがピーナツペーストです」

加瀬さんはピーナツペーストを持って、首都圏を中心に有名パン店をまわり、売り込んでいきました。そこで意見をもらい、味・品質のブラッシュアップにも努めました。
並行して、ブランド「Bocchi」を立ち上げます。「ぼっち」とは収穫した落花生を昔ながらの方法で乾燥させる際、畑につくるわらの山のようなもの。また、耕作放棄地を借りて自社農園とし、無農薬有機栽培での落花生栽培もスタートしました。

「徐々にピーナツペーストの評価が上がり、納品先も増えました。ほとんどやっている生産者がいない無農薬有機での落花生栽培を問屋が始めた、というのが口コミで広がり、パティシエさんや外資系の高級ホテルのバイヤーさん、そして有名レストランのシェフの方などがセガワを訪れるようになっていったのです」

それでも加瀬さんはまだまだだと感じていました。ピーナツペーストだけでは落花生の喫食機会が少ない、もっと気軽に食べてもらえる機会をつくりたい、と考えていたのです。

もっと身近に、もっと頻繁に、千葉県の落花生を食べてもらいたい

もっと身近に、もっと頻繁に、千葉県の落花生を食べてもらいたい

パン店や菓子店とのつながりが強くなったことから、落花生を使って焼き菓子などのスイーツはできないか、と考えた加瀬さん。当初は小麦粉を使ってサブレやクッキーなどの試作をしていたそうです。

「2025年の6月までの5年間、小麦粉での商品開発を考えていました。ちょうどその頃に『ほたる育むお米』の生産者さんに出会ったのです。ほたるを旭市の川に呼び戻そうと、環境と生態系に配慮して無農薬有機栽培でお米をつくられている生産者さんです。自然を大切にしようという思いに共感し、そのお米を使って菓子をつくろうとひらめいたのです。また、セガワは落花生だけでなく、米の問屋でもありました。幸いにも、米を仕入れて自ら取り扱うノウハウと権利をすでに備えていたのです」

「ほたる育むお米」は飼料用に使われ、広く一般的には売られていませんでした。ですが、セガワが米粉用に購入するとなれば、生産者さんの収入アップにつながります。水田活用の補助金も交付されます。その申し出を、生産者さんは喜んで受け入れてくれたそうです。
そこから米粉でのスイーツ開発がスタート。米粉商品の試作中に米粉商品開発等支援対策事業の存在も知り、そこから急ピッチで準備を整え、セガワは本事業に参画することとなったのです。

スイーツのレシピづくりは、ピーナツペーストでつながっていた福井県の有名菓子店に依頼。洋菓子のパティシエ経験もある菓子職人さんで、米粉にも精通した方だそうです。加瀬さんの依頼を快く引き受け、米粉と落花生の良さを引き出すレシピを考案してもらえました。オンラインレッスンを通じて、セガワの社員がその製造方法を習得。しっかりと味や品質をチェックしてもらい完成させたといいます。その費用にも本事業が活用されています。

もっと身近に、もっと頻繁に、千葉県の落花生を食べてもらいたい
新名産品として日本全国に広め、千葉の価値を未来につなぎたい

新名産品として日本全国に広め、千葉の価値を未来につなぎたい

完成したのは、10種類の製品。サブレとフィナンシェ、グラノーラ、そして「ほたる育むお米」の米粉です。落花生はセガワが生産した無農薬有機栽培の落花生のほか、厳選した契約農家から仕入れた安心・安全なものばかりを使いました。その他に使用している塩・卵も地元産にこだわっています。添加物・保存料は使用せず、グルテンフリーで安心して誰もが食べられる製品となりました。

広告用の動画撮影・LPサイトの制作、パッケージのデザインなどにも本事業を活用。パッケージ作業の一部は、旭市の福祉施設の皆さんに依頼し、農福連携も果たしています。
今回、本事業を活用して誕生したBocchiの製品は「グルテンフリーシリーズ」と名付けられ、売上の1%が、千葉県旭市に生息し千葉県の最重要保護生物に指定されているシロチドリの環境保護にあてられます。

「落花生とそのビジネスをもう一度盛んにするためには、自分たちの利益だけを考えていてはだめ。落花生を育ててくれた旭市の自然と、そこで様々なものの生産や商売を行う皆さんと協力し、共に発展を目指さないといけません。その連携のひとつの形が、今回の製品。旭市だけでなく、これまで私が出会って、助けられた人たちとの縁もあって生まれた製品でもある。その感謝を、この製品を世に広めることで、皆さんに返していきたいですね」

目指しているのは、新たな千葉土産として知名度が広がること。千葉を訪れた観光客の方が、セガワの製品を手に取り、そのおいしさを知り、広めていってほしいと加瀬さん。そうなれば、協力いただいた旭市の生産者さんやつながった人たちに利益を還元でき、旭市の自然も守れる。価値あるものを、しっかりと未来へつないでいける、と話してくださいました。

新名産品として日本全国に広め、千葉の価値を未来につなぎたい

※本記事は2026年2月時点の情報です