自社生産の「生米粉」が切り拓く、米消費の新たなカタチ

自社生産の「生米粉」が切り拓く、米消費の新たなカタチ

福岡市に拠点を置く株式会社Dominoは、生米粉を用いたベーグルで、パン食の浸透が進む若者世代やインバウンド層に国産米の「おいしさ」を改めて気づいてもらえるよう、生米粉ベーグル専門店「こめとら天神店」をオープンしました。
2026年2月のオープン以来、連日行列が絶えず午前中に完売してしまうほどの盛況ぶりです。その人気の中心にあるのは、乾燥米粉ではなく水分を保持した状態の「生米粉」を贅沢に使用した、独特の食感を持つ米粉ベーグルです。

今回こめとら天神店では、米粉商品開発等支援対策事業を活用して、福岡の特産品である八女抹茶を練り込んだ「生米粉のベーグル 八女抹茶Wチョコ」「生米粉のベーグル 八女抹茶あんこ」を開発。店長を務める高盛仁さんが、米粉が持つ可能性と米粉がもたらした一つの効果について話してくれました。

米づくりから製粉までを内製化し、生米粉による差別化

こめとら天神店の最大の特色は、原料となる米の生産から製粉、そして製品の加工に至るまで自社で一貫して行う体制にあります。2022年から山口県宇部市で米づくりをはじめ、収穫した米を自前で丁寧に製粉することで、でんぷん質の損傷を抑えたきめ細やかさが特徴の米粉を生み出しています。

「他社商品との明確な差別化は、乾燥工程を経ない『生米粉』の使用にあります」と高盛さんは説明します。生米粉は水分値が約27%と高く、その日の環境に合わせて繊細な配合調整が求められるため、乾燥米粉に比べて高い製造技術が求められます。こめとら天神店のベーグルは、この生米粉を生地の約4割に使用することで、米本来の優しい甘みを引き出し、他の米粉商品とは一線を画す「ふっくら、しっとり」とした力強いモチモチ食感を実現しています。

米づくりから製粉までを内製化し、生米粉による差別化
米づくりから製粉までを内製化し、生米粉による差別化

また、地産地消の観点から福岡・八女産の香り高い抹茶を生地に練り込んでいます。「開発過程では具材による吸水率の違いや発酵の見極めに苦慮しましたが、補助金で導入したスチームラックオーブンの活用や冷凍・解凍プロセスの最適化により、品質の安定化に成功しました」と高盛さん。
小麦パンやベーグル製造の豊富な経験がある高盛さんですが、米粉での商品づくりははじめてのこと。こめとら本店の技術サポートを受けながら商品開発に挑みましたが、天神店は場所柄インバウンド層を含め多くの来客が見込まれました。

量産体制の構築は必須で、こめとら本店とは違う機材での開発が求められました。その条件下、1カ月に及ぶ試行錯誤を経て、本店と同等の「ふっくら、しっとり」を実現したのです。できあがったベーグルは、そのしっとり食感が抹茶の上品なほろ苦さと調和し、インバウンド層も満足する高い完成度でとても好評だといいます。

米粉がもたらす、ワークライフバランスの向上

米粉による商品づくりは、製造現場にワークライフバランスの向上という副次的な効果ももたらしています。その理由について、高盛さんは自身の長年のパン製造の経験と照らして、米粉が持つ製造上の利点によるものだと分析しています。

小麦粉を用いた製パン工程と比較して、米粉には発酵時間が極めて短時間で済むという特性があります。高盛さんは「米粉は仕込みから焼き上げまでにかかる時間が、小麦粉よりも大幅に短縮できるので、パートやアルバイトスタッフ含めた製造スタッフの作業開始時間を大幅に繰り下げられます。米粉を使った工程は、生活にゆとりを生み出す要因になっていると思います」と話します。
この時短効果は、単なる効率化だけでなく、働く人の心身の健康維持につながり、安定した製造体制を構築するための重要な要素となっています。

米粉がもたらす、ワークライフバランスの向上

また、高盛さん自身がパン製造に従事するなかで小麦アレルギーを発症したことから、グルテンを含まない米粉を使った調理は、アレルギーを持つ職人にとっても快適に働ける環境を提供しているといいます。製造過程では、生地の乾燥を防ぐガス袋の導入など、生産性向上と品質維持を両立させる工夫も随所に施されています。
製造者と消費者の双方が健やかに食に関われる米粉を起点にした環境づくりは、持続可能性が求められる現代にとてもフィットしているとも言えるのです。

地域の米農家を支え、次世代へつなぐ米の新しい選択肢

地域の米農家を支え、次世代へつなぐ米の新しい選択肢

現在、天神店での販売実績は当初の月間目標を大きく上回り、新商品の抹茶Wチョコだけでも月間2,000個近くに達する勢いを見せています。その一方で「好調な販売に比例して増大する米粉の原料確保が喫緊の課題になっている」と高盛さんは話します。しかし、この需要の拡大こそが、こめとら天神店が目指す地域農業への貢献のカタチでもあります。

「おいしいお米をベーグルという現代の食生活に馴染みやすい形で提供することで、米の消費拡大に貢献したい」と高盛さんは話します。米粉の活用が定着すれば、地域の米農家の所得向上や、次世代の担い手への意欲醸成といった地域課題の解決に寄与します。自ら土を耕し、収穫した米を付加価値の高い商品へと昇華させるこめとら天神店の取り組みは、農業の持続可能性を高めるモデルケースになり得るでしょう。

今後は生米粉を用いたパンやクロワッサンの開発に加え、国内百貨店への進出や現地の米を用いた海外展開も視野に入れているといいます。自社一貫体制がもたらす「生米粉」から生まれるこめとら天神店の米粉商品は、旺盛なパン食需要の中に「米」に親しむ機会を増やすという新たな選択肢を提示してくれています。

※本記事は2026年2月時点の情報です