地元の米粉と野菜・果実で、誰もが選べるおいしいお菓子

地元の米粉と野菜・果実で、誰もが選べるおいしいお菓子

広島県尾道を拠点に米粉の焼き菓子づくりと販売を手がける、はたけのおやつ。事業主の内畠万悠子さんは、「アレルギーの有無に関係なく、みんなが同じ食卓で同じものを食べて、笑顔になれる体に優しいおやつをつくりたかった」と語ります。

米粉のマドレーヌから始まった挑戦

最初に取り組んだのは、米粉のマドレーヌでした。小麦・卵・乳製品を使わない焼き菓子は、コクやしっとり感を補うためにナッツ類を使用する例が少なくありません。しかし、ナッツアレルギーのある人にとっては、それもまた大きな壁になります。内畠さんは、小さな子どもでも安心・安全に食べられ、ナッツも使わずにおいしさを成立させることを目標に、プラントベースの食材を探し、試行錯誤を重ねながらレシピ開発に向き合ってきました。

約1年に及ぶ開発を経て、2025年4月、屋号を「はたけのマドレーヌ」としてマルシェへの出店をスタートしました。一般的に小麦や卵、乳製品を使わない焼き菓子は、「仕方なく選ぶもの」「物足りないもの」と受け取られがちです。実際にマルシェでお客様と接する中でも、その現実を目にしてきたといいます。

米粉のマドレーヌから始まった挑戦
米粉のマドレーヌから始まった挑戦

「子どもは『自分には食べられないもの』と諦め、お母さんも『どうせおいしくない』と思って選ばない。その状況を変えたかったんです」と内畠さん。

マルシェでの声がけをきっかけに足を止め、手を伸ばしたお客様からは、米粉マドレーヌのおいしさやしっとり感に驚く声が寄せられました。一方で、新たな課題も見えてきます。それが「選べる楽しさ」の不足でした。マドレーヌだけでは選択肢が限られます。さらに「大豆もだめで食べられない」という声も聞こえてきました。

お客様の声に応えたいという思いが、クッキー、カヌレ、スコーンへと商品を広げる新たな挑戦につながりました。一部の商品では大豆も使用せず、より多くの人が同じ食卓で選べるおやつを目指しています。

地域の恵みで色とりどり、選べるおいしさをかたちに

商品開発で内畠さんが最も向き合ったのは、アレルギー対応菓子に根強く残るイメージをどう払拭するかでした。「仕方なく選ぶお菓子、という存在にはしたくなかった。誰にとっても『おいしいから選ぶ』おやつでありたかった」といいます。

そのために据えたテーマが、「バリエーション」と「おいしさ」の両立でした。軸となるのは、地元・広島の生産者とつながる素材選びです。広島県竹原市で育ち、農業の大変さを身近に見てきた内畠さんは、無農薬・減農薬にこだわる小さな農家を訪ね、顔の見える関係の中で野菜や果物を仕入れています。ニンジンやビーツ、無農薬のほうじ茶、瀬戸内レモン、竹原にちなんだ竹炭など、各フレーバーには、この土地ならではの特産品の魅力が込められています。

地域の恵みで色とりどり、選べるおいしさをかたちに
地域の恵みで色とりどり、選べるおいしさをかたちに

焼き菓子のベースとなる米粉にもこだわっています。広島県産の米を、県内の老舗製粉会社で気流粉砕した米粉を使用。粒度が細かく安定していることが、軽さや口どけを生み出す土台となっています。一方で、米粉だけでは生地が固くなりやすいため、玄米粉を加えるなど配合を調整し、食感に幅を持たせました。

こうした工夫を重ね、マドレーヌは当初の4種類から6種類へと拡充。素材ごとに焼き加減や温度管理を変えて色みを生かし、見た目にも楽しめる商品づくりを心がけています。さらに、大豆を使わないクッキーの開発にも挑戦し、より多くの人が「選べる」状態を整えてきました。こうした知見は、カヌレやスコーンといった新商品の開発にも生かされていきます。

瀬戸内の生産者とともに描く、米粉のおやつの未来

商品数の増加を機に、屋号は「はたけのマドレーヌ」から「はたけのおやつ」へと改称しました。これからさまざまなお菓子に挑戦していくという決意の表れでもあります。次に挑戦したいのは、「卵がなければ成立しない」と思われがちな洋菓子。シフォンケーキなど難易度の高いお菓子にも、卵を使わないレシピで挑みたいと考えています。

こうした展開を後押ししたのが米粉商品開発等支援対策事業です。特に補助金を活用してブラストチラー(急速冷却機)を導入したことで、冷凍による品質保持と全国発送が可能になりました。お客様が好きなタイミングで解凍して食べられるようになり、利便性も向上しています。
「事業を次の段階に進めたいと感じていた時期に、支援を受けられたことが大きかった」と内畠さんは振り返ります。現在はシェアキッチンを製造拠点としていますが、将来的にはコンタミネーションにも配慮した自社工房や常設店の開設も視野に入れています。

瀬戸内の生産者とともに描く、米粉のおやつの未来

将来的な目標は、「はたけのおやつ」の米粉菓子が、アレルギーフリーで安心できるものとして広く認知され、迷わず選んでもらえるブランドになること。その実現に向け、SNSでの発信にも力を入れ、出店している生産者直売型のオーガニック食品ECモールでは、着実に評価を積み重ねてきました。

地域の生産者が大切に育てた米、野菜、果物などの農産物と、これまで培ってきたレシピ開発力を掛け合わせ、「ここでしか食べられない」安心でおいしい米粉のお菓子を一人でも多くの人に届けていく。それが、内畠さんの変わらぬテーマです。

※本記事は2026年1月時点の情報です