
米粉の特性を生かし、もちもちとした弾力のある食感に仕上げた米粉おやき。蒸してから焼き上げる製法により、しっとり感と香ばしさを両立させています。レモンチーズや白あんキャラメルなど従来のおやきの枠にとらわれない餡を包み、スイーツにも食事にも楽しめる一品です。注文を受けてから焼き上げる提供方法で、できたての食感と風味を届けます。
各種250~300円/1個(80g)
・株式会社ジュンカン 緑町クッキングスタジオ
埼玉県所沢市緑町4-7-8
・所沢市近郊の農産物直売所など

株式会社ジュンカン代表取締役で起業家の岩﨑力也さんは、米に関わる事業の可能性を追い続けてきました。米ぬかに着目し、米ぬか茶の開発にも取り組みましたが、飲料は設備や流通のハードルが高く、継続的な展開には課題が残りました。そうした実感から、より現実的に事業として成り立つ形を探るようになります。
その中で目に留まったのが、長野県で親しまれている小麦粉のおやきでした。地域に根づく郷土食でありながら全国的に知られ、比較的少ない資本で始められる点、さらにスイーツにも総菜にも展開できる点に可能性を感じたといいます。「これを米粉でできないか」と考え始めました。
調べていくと、新潟県南魚沼市周辺には米粉でおやきをつくる食文化があることを知りました。ただし、それは家庭的な食習慣として受け継がれているもので、専門店として展開されている例は見当たりませんでした。そこに新たな事業の可能性を感じたといいます。
「小麦粉はすでに市場が成熟し、主要企業が存在感を示しています。一方で、米粉はまだ成長の余地が大きい分野だと感じました」と岩﨑さんは語ります。
これまでの経験を踏まえ、米粉おやき専門店を立ち上げるという構想が具体化していきました。こうして、商品となる米粉おやきの開発が動き出しました。


開発で最も苦労したのは、米粉生地の扱いの難しさでした。製造機械の多くは小麦粉を前提に設計されており、グルテンを含まない米粉はそのままでは機械を通すことができません。安定して成形するためには、生地そのものの改良が必要でした。
シリコンモールドに生地を流し込む製法も前向きに検討しました。高価な自動包餡機を導入せずに済む可能性があったからです。しかし、米粉は成形が難しく、想定以上に手間と時間を要しました。「結果的に2カ月以上を費やすことになりましたが、米粉に対する理解は深まりました」と岩﨑さんは振り返ります。
こうした試行錯誤の中で考えたのが代替粉の活用です。大豆粉やさつまいも粉を配合して検証を重ねました。大豆粉は機械を通すことは可能ですが、生地が黄ばんでしまうという課題がありました。最終的に採用したのはさつまいもでん粉です。成形の安定性は高まりましたが、鹿児島県を中心に南九州でのみ製造されているため、原材料の安定供給という新たな課題を抱えています。
こうして配合の見直しを重ね、生地は水分を多めに含ませる設計とし、もちもちとした弾力と柔らかさを両立させました。蒸してから焼き上げる製法により、しっとり感と香ばしさも加わります。口ほぐれがよく、餡となじみやすい生地に仕上がりました。
この生地の特性を踏まえ、餡づくりにも力を注ぎました。長野県のおやきにみられる伝統的な具材にとどまらず、斬新なフレーバーに挑戦。料理研究家の協力を得ながら、粒あんにはインスタントコーヒー粉末と胡桃を加えるなどの新たな組み合わせを提案しています。レモンチーズや白あんキャラメルソースにココナッツやドライフルーツを合わせたスイーツ系、永田農法のネギを使ったノリネギや和風キーマ餡などの惣菜系として、まずは9種類を完成させました。


現在は、所沢市の緑町キッチンスタジオを拠点に米粉おやきの試験販売を行っています。実際に提供する中で見えてきたのは、スイーツ系フレーバーへの好反応と、「もちもち」食感への高い評価です。一方で、「やや重い」といった意見もあり、油分を抑えるなど軽さへの工夫も検討。味と食感の調整を重ねる場となっています。
岩﨑さんの構想は、商品開発にとどまりません。目指しているのは、米粉おやきを焼き立てで提供するファストフード型の店舗展開です。水分を多く含む米粉生地は流通には不向きですが、注文を受けてから焼き上げることで、その特性を強みに変えることができます。
将来的には、緑町キッチンスタジオをセントラルキッチンとして機能させるべく、米粉商品開発等支援対策事業により、自動包餡機で製造した商品を冷凍保存し、必要に応じて焼成する体制の構築を進めています。
「ファストフードとしての商品力を高め、将来的には人通りの多い場所に出店したい」と岩﨑さん。省スペース型店舗を展開し、セントラルキッチンで製造・冷凍した商品を現地で焼き上げて提供する形を想定。原材料調達や製造工程の工夫を重ねながら、手に取りやすい価格帯を維持し、他にはない味を提供し続けることが目標です。
「米粉はマーケットとして未開の沃野だと考えています」と岩﨑さん。新ジャンルのファストフードとして食べ方まで含めてフレキシブルにスピード提供することを目標に、ドリンクやサイドメニューの開発を始動させます。完成形はまだ道半ばにありますが、米粉おやきの可能性を広げる挑戦は続いています。

※本記事は2026年2月時点の情報です